村上春樹『ノルウェイの森 上』

不完全な容器

結局のところ――と僕は思う――
文章という不完全な容器に盛ることができるのは
不完全な記憶や不完全な想いでしかないのだ。

(村上春樹ノルウェイの森 上』p.20より)

東京についてやるべきこと

東京について寮に入り新しい生活を始めたとき、僕のやるべきことはひとつしかなかった。
あらゆる物事を深刻に考えすぎないようにすること、
あらゆる物事と自分とのあいだにしかるべき距離を置くこと――それだけだった。

(村上春樹ノルウェイの森 上』p.47-48より)

死について

死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。

(村上春樹ノルウェイの森 上』p.48より)

直子の外見

彼女の微笑みは淡い色あいの遠くの情景のように見えた。
(中略)
彼女はまるで小学生の女の子のようなさっぱりとした髪型をして、
その片方を昔と同じようにきちんとピンでとめていた。
その髪型は本当によく直子に似合って馴染んでいた。
彼女は中世の木版画によく出てくる美しい少女のように見えた。

(村上春樹ノルウェイの森 上』p.190より)

食堂の雰囲気

その食堂の雰囲気は特殊な機械工具の見本市会場に似ていた。
限定された分野に強い興味を持った人々が限定された場所に集って、
お互い同士でしかわからない情報を交換しているのだ。

(村上春樹ノルウェイの森 上』p.196より)

ピアノ少女の外見

天使みたいにきれいな子だったわ。
もうなにしろね、本当にすきとおるようにきれいなの。
あんなきれいな女の子を見たのは、あとにも先にもあれがはじめてよ。
髪がすったばかりの墨みたいに黒くて長くて、手足がすらっと細くて、
目が輝いていて、唇は今つくったばかりっていった具合に小さくて柔らかそうなの。
私、最初見たとき口がきけなかったわよ、しばらく。それくらい綺麗なの。

(村上春樹ノルウェイの森 上』p.223より)

ピアノ少女の細かい計算

彼女は他人を感心させるためにあらゆる手段をつかって細かい計算をしてやっていく子供だったのよ。
どうすれば他人が感心するか、賞めてくれるかっていうのがちゃんとわかっていたのよ。
どういうタイプの演奏をすれば私をひきつけられるかということもね。
全部きちんと計算されていたのよ。

(村上春樹ノルウェイの森 上』p.225より)


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村上 春樹
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